ブログ始めます。ポトレのお話①
『今美容室出ました~』
『どこいますかぁ?』
『あっ!いたかも!』
いままである程度女性を撮影してきたが、
今回は特別思い入れのある彼女。
去年の秋、なし崩し的にカメラを買わされることになり、
思いのほか面白くて気づいたらはまっていた。
特に人物撮りに興味わいたのだけど、練習台が見つからずどうしようかなーと思っていた。
当時は紅葉の季節だったので、仕事を終えては松島に通う毎日。
期間中ほぼ皆勤賞で庭園のライトアップされた紅葉を撮りまくっていた。
そこのスタッフとして働いていた彼女。
ゆるく巻いたロングめの茶髪、黒スキニーとパーカー、法被を羽織っている。寒いのに声がよく出ている。きらきらした目が印象的だった。
5日目くらいで存在を認知してたが、声のかけ方も身についておらず(※1)
ただ脇目でちらちら助平な視線を送っていた。オナネタにはしていない。
さすがに紅葉も撮り飽きてラスト2日目くらいには顔写さない条件でスタッフも構図に入れてた。あの法被がかっこいいんだよなぁ。
順路の折り返し地点を過ぎ、彼女を見つける。我ながらなかなかキモいトーンで声かけたのを覚えている。
「アッッ↑あのすみません、カメラ練習してるものなんですけど」
『えっはい』
「後ろ姿でいいので、写ってもらえませんか」
『ほかのお客様が来るまでならいいですよ』
ほかのスタッフも撮ってたのに、この子の時だけは「え、マジで?」と焦ったのを覚えている。結果、ピンボケした三分割構図の写真を量産した。
『いつも来てますよね?』
「え、俺そんな目立ってました?」
『熱心に写真撮ってるなぁ~と思ってました』
恥ずかしかった。沢山お客さんいるし認知されてないと思ったから。
同時に期待もした。ナシと言われてる気がしなかったから。
「LINEのID渡してもいいですか?写真ほしくなったらいつでも送れるんで」
『え?あっはい』
閉園のアナウンスが流れる。
連絡先を渡したはいいものの、写真送るのがめっちゃはずかしくなってきた。
いやそもそも連絡くるはずねーか…。
帰宅して写真を整理していると、スマホに震える知らせ。
『松島の紅葉子です!お写真いただきたくて連絡しました!』
事務的な文面で素直に喜べなかった。なんとなく写真送ったらブロックされると思った。アルバムを作成して、送ってみる。
『どれも素敵です!写真撮るの上手ですね~!』
どの客にも愛想よく接していたのはわかってた。わかってたけど嬉しかった。
最終日、えも言えぬ満足感から庭園には行かなかった。
それからひと月くらいは他愛もない話題でやり取りしてた。学生らしく就職の事とか、母親のプレゼントの話とか。恋愛の話はなんとなく避けてた。
絡みも徐々に薄くなり年末に連絡が途切れた。年始にザオラルを試みるも返答なし。
8月。女性のポートレート経験も積んだので今一度連絡をしてみる。
「100年ぶり!写真撮らせていただきたいのだけど」
『100年ぶりですね笑 まだやってたんですね!』
普通に返事がきた。返事がなかった理由は聞かなかった。
忙しいからと言われると思ったし、それに対しての返しが思いつかなかったから。
インスタのアカウントを見せて再打診。
時間ある時協力しますね、と返事が来る。
ここで引いたら終わりと思ったのでカレンダーのスクショに空いてる日を書き込み教える。
8月は卒論があるので忙しいとの事。
9月は出張が控えていたので先延ばしになりすぎるのが怖かった。ドタキャンされそうで。
結局8月末に予定が決まり、9月に撮影することに。
ずーっと腑に落ちないことがあった。
自分みたいな30過ぎのおっさんに協力的なところ。
いつも忙しいのに明るいところ。
いちいち褒めるところ。
八方美人か偽善者か、記憶に補正がかかってるだけで実はかわいくないんじゃね?とか思ったりしてた。
でも人間は希望的観測が好きな生き物。例外なく自分も期待して過ごしてた。
当日。
2時間前に現地入りし下見。やべ、意外と撮れる場所ねぇww
撮影時間は3時間。経験上物足りない時間だけど、はじめましての人にはちょうどいいくらいのはず。逆に時間余り過ぎて終わるのも気まずいww
路地裏やら定禅寺通りやらを歩く。いちおう尺つなぎできそうなところを見つける。
集合20分前。スマホから震える知らせ。
『白シャツの目立つとこ汚しちゃいました~泣』
『ショックで報告しちゃいました…!』
ドタキャンの流れ?とも思ったけど、なんか可愛くて口角が上がった。
コンビニでシミ取りを買っておいた。
集合15分前。前髪メンテのため美容室に来たと連絡がくる。
せっまい駐車場でタバコをふかす。なるべく煙をビル風にさらして、匂いがつかないようにする。リステリンでうがいも済ませる。
あぁやばい、撮影アイディア飛んじゃったわ。
スマホが震える。着信。
『今美容室出ました!』
『どこいますかぁ?』
「(くっ声かわいいな)待ち合わせ場所にいたよ」
『え~?あっいたかも!』
『お疲れ様です』
「おォ~っす↑」
顔全然覚えてなかったけど、今までで一番の被写体。
俺は勃起を余儀なくされた。
後編へ続く
※1…岩クマー氏によるレッスンは受けていたが、本腰入れて活動はしていなかった。