歩く地蔵の軟派譚

30過ぎた打診ができない男の手記です。有益ではない。

ブログはじめます。ポトレのお話②

 

紅葉子と無事合流。

タバコくさくないかなと心配だった。

 

「シャツのシミ大丈夫?これさっき買ってきたわ。コンビニでも売ってんのね」

『え??じゃーん!私も買ってきました(笑)てかめっちゃ優しい~』

 

擬音やめろ。かわいいから。お互いに買ったシミ取りを見て笑いあう。

サプライズは無事失敗。圧倒的非モテコミット。

 

期待以上に汚れが取れてくれてすげーってなってた。

出番のなかった自分のシミ取りは車のダッシュボードに放った。

 

 

撮影場所に向かう。

とにかく緊張してたのを覚えている。というかそれしか覚えてない。

完全にカメラの性能と紅葉子の明るさに助けられた撮影だった。

自分で納得いくショットがなかったのが申し訳なかった。

 

場所を移す。西日がいい感じになってきたのでギヤを上げる。黄昏時は被写体を映やすけど、本当にあっという間。

イメージしたのが全然撮れない。やったわこれ。。。

撮影中、余裕はないけどできるだけしゃべるようにしてる。不意にいい表情をくれる時があって、これが自分にとっての脳汁ポイント。ロケーションも悪くない。ここで挽回できる一枚を狙う。

「ほんとに被写体初心者?カメラ慣れてんね」

『友達同士で撮るし、たまにサロモもやるので』

「あ~それかも。全然表情固くないもんね」

「てか毎日全力で生きててたまに心配なるよ。体悪くすんなよー。」

『もう悪くしちゃったんです(笑)』

「え?具合悪いん?」

『うまく説明できないんですけど、8月にガンみたいなのが見つかって。治らないみたいです』

 

心臓が一瞬止まったのが分かった。

何をしゃべっても地雷を踏む気しかしなかった。

 

え、こんな元気に笑ってるのに…

 

とにかく取り繕わないと。余裕ある態度見せなきゃ。

どんなフォロー入れたか忘れたけど、

「俺んちもガン系統でさ」

って言ったのは覚えてる。こんなことしか言えないのかよと思ってた。

薄っぺらい自分が、本当に情けなかった。

 

 

彼女のバイトの時間が迫る。

「お疲れ。どうもありがとう。メシ食わん?」

『ありがとうございました。めっちゃあっという間でした!ごはん行きましょう!』

「嫌いなものは?」

『基本ないですね~、なんでも好きですよ!』

「んじゃ今から3番目に見つけたごはん屋さんはいろ」

『新しいですね(笑)』

「こういうの疎くてさ。おれ貧乏舌だから、食いもん全部美味く感じるの」

『私も同じです(笑)』

たぶん嘘だろうな。君めっちゃ料理好きやん。

 

微妙な時間過ぎてごはん屋さんが全然やってない。

結局定禅寺通り一周してしまった。

10軒目くらいのお店に入る。

 

対面式のカウンターキッチン。目をキラキラさせて料理を待つ紅葉子がめっちゃ可愛かった。

 

 

バイト先まで送る途中、打診をしてみた。

「俺もこの後用事あるし、また合流しよ」

 

さて何のグダが来るかな。

 

『え、遅いのでいいですよー』

 

あれ、弱いな??

 

「0時過ぎでしょ?俺も大体その時間なるし」

 

『えーじゃあ、お願いしてもいいですか?』

 

 

あれ、通ったな???

 

「んじゃ終わったら連絡ちょうだいよ」

送り出すように腰をポンと押す。

今思うと、ハンドテストも何もしてないのにこれはセクハラではないだろうか…。

やばい、切られたらどうしよう…

 

だいぶ時間があるのでスト開始。

今日はわりとかわいい子歩いてる。

幸せな気持ちになり地蔵した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

0時半頃、震える報せ。

『バイト終わったんですけど、ちょっとドンキ寄っていいですか?』

「全然よいよ、近くまで移動しとく!」

 

いつ買い物が終わるかわからないので路駐は怖い。

近くのパーキングに車を停め、何となく近くをうろうろする。

 

前方から3つの人影。紅葉子とバイト先の男の子×2だった。

驚いた様子の紅葉子。なんか声かけようとしてたっぽいけどすぐ俺は顔をそらした。

邪魔をするのは野暮だから、それもそうだけど、男の子たちに話しかけられたらクソ雑魚ムーブしそうで怖かった。

 

俺は本当に気が弱い。

 

それから10ほどして再度震える。

『終わりましたー!!』

 

乱が終わったんですかね、そんなことを考えながらドンキへ向かった。

 

30mくらい前方にナンパされている紅葉子を見つける。

丁寧に断っていたのが愛おしかった。

 

何も見てない体で合流する。

 

「おつかれー」

『おつかれさまです、遅くなってすみません』

 

少しの疲れもなさそうな紅葉子を車に乗せる。

送迎中の30分間、いろんな話をした。

 

バイトが明日で終わりなこと。

旅行よりも旅館が好きで、県内の温泉旅館を制覇したい野望があること。

 

 

途中、時間を稼ぎたくてマイナー道を走る。道詳しいことに感動していた。たまたまだけど、食いつきが上がったであろうことが一つでも起こると嬉しかった。

自分の話をするときはちゃんとこちらを向いて話してくれてるのが横目で分かって、若いのにすげーなと思った。あとキラキラしててまぶしかった。

さてここから恋愛トーク、下ネタをぶち込んで…!

 

 

―――――結論、その日は何も起こせず解散した。感謝だけされて。

 

打診できなかったのはいつも通りだとしても、なぜできなかったのか?

万万が一期待してたのではなかろうか?

 

・雑談の尺を取りすぎた

・嫌われたくなかった

・明日も早いと聞いていた

 

断られそうな話を出されると一向に打診できなくなるこの性格をどうにかしたい。

車だけでなく会話もドライブしなければならなかった。

 

言いたいことがまとまらない。

 

彼女とまた会える時は来るのだろうか。

はじめてモデハンした被写体、この機会まで一年待ってあっさり終わってしまうのか。

写真も失敗した、次は何を口実に会う理由付けをすればいい。なにも思いつかない。

 

 

なんでいつもこうなんだろ、本当に薄っぺらい。